個人投資家がJAL経営破綻を予見することはできたか

JALが「突然死」した.今回,これで痛手を被った個人投資家も大勢いたことと思う.私も私財で株投資を行っている一個人投資家として,今回の破綻から何を学ぶべきか,しばらく考えてみたい.

まず,最初にできることとして,過去のIR情報に目を通しておくべきだろう.早速,JALのウェブサイトから,最新の決算短信「株式会社日本航空(9205) 平成22年3月期 第2四半期決算短信」をダウンロードして読んでみた.

読み始めてすぐさま飛び込んできたのが,『1.連結経営成績に関する定性的情報』(4ページ目)に記述されている,ADR申請に関する記述である.その箇所をそのまま引用する.
 こうした状況下,JALグループでは,10月29日に,株式会社企業再生支援寄稿(以下「機構」といいます.)に対し,JALグループの再生支援を依頼し,再生支援に関する事前相談を開始しました.また,本日(平成21年11月13日),産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法所定の特定認証紛争解決手続(事業再生ADR手続)を申請しました.JALグループとしては,できる限り早期に関係者の皆様からのご理解をいただける事業再生計画を確定し,JALグループの事業の再建に向けて最大限の努力を払ってまいります.
これを解釈すると,「財務状況が逼迫し,自力での経営立て直しが困難になったので,機構の力を借りることにしました.出来る限り早く再建計画を立てるため,頑張っています.」という感じだろうか.投資先として,かなり不安を覚える文言である.そして,そのバックに立っている日本の財務状況を考えてみると,さらなる不安を感じざるを得ない.

この不安な文章だけでも個人投資家の投資先として不適格と判断するに十分ではあるが,もう少し短信を読み進めてみる.

まず気になるのは,利益剰余金がマイナスで膨らんでいることである.2009/3/31時点で -21,874,9/30時点で -159,397 である.これは赤字経営が続いていることが原因だ.

次に,キャッシュフローを見てみると,第2四半期のみなので評価しづらいところだが,次の表(単位:百万円)のようになっている.

前第2四半期当第2四半期
営業活動によるCF90,563-39,832
投資活動によるCF-221,003-61,959
財務活動によるCF-45,09935,156

前第2四半期では,やや投資につぎ込みすぎという印象はあるものの,それほど悪くはない.だが,当第2四半期では,営業CFがマイナスになり,資金調達をしていることが分かる.このことから,大企業といえども,経営にそうとう苦しんでいる様子が見えてくる.こういう企業は,投資対象としてはリスクが高いのではないか.

以上,最新の短信をざっと眺めたところ,この短信が発表されたとき(2009年11月13日),JALが経営リスクを抱えている様子はかなり明確に提示されていたことがわかった.個人投資家としては,このような企業はリスクが高いことを認識したうえで投資対象として考えていかないとならないのだろう.

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