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デフレは終わらないのか?

「デフレは終わらない」(上野泰也著)を読み,依然触れた物価とGDPデフレータの矛盾のなぞ( いったいインフレなのかデフレなのか )が少しほぐれてきた.テレビにもよく登場する著者によると,要するに「デフレは終わらない」ということだ.つまり「GDPデフレータが正しい」と言っている. 著者は,今回の物価高を次のように見ている: 現在の物価は原油高に起因するものであって需要の増加によるものではない.→需給と関係ない物価高は長続きしない.→いずれ物価は平均的に下落する. GDPデフレータがマイナスの状況では,給与所得の成長は見込めない.そのような状況で内需を拡大し,景気を上向かせるためには,資産インフレ(プチバブル)を起こし,資本の流出を流入に転換してゆく必要があるだろう.

ロスカットの効果

投資の世界では,利益最大化を狙う人よりも,損失を限定化する人が平均的に良い成績を上げると言われている.つまり,ロスカット(損切り)が上手い人のほうが儲かる確率が高くなるというのだ.このロスカットの効果をどのようにとらえられるか,株式を例にとって考察してみた. ロスカットルールを導入することは,プットオプション付きの株式に投資することと,ほぼ同等とみなせる. プットオプションの行使価格はロスカットライン,行使期間は投資期間である.通常のオプションと異なるのは,株価がロスカットラインを少しでも下回ったら,その時点でオプションが行使される点である. 実際はオプションが付与されるわけではないので,対象株式の流動性が十分高くないと,この近似は成立しない.つまり,売りたいときに売ることができ,かつ,値動きが連続的でなければならないのだが,これはさほど厳しい条件ではない.オプション計算でも,設定される仮定である. この近似が成り立つと仮定すると,ロスカットの(現在)価値は,行使価格がロスカットラインのプットオプションの現在価値に等しいことが導かれる.これには,ブラック・ショールズのオプション計算式を応用する.すると,ロスカット無しの期待リターンは「ゼロ」なのに対して,ロスカット有り場合,プットオプションの価値だけリターンが見込める. ポイント ・ロスカットは投資の期待リターンを押し上げる. ・ロスカットを伴う投資の現在価値は,プットオプションの価値に等しい.

買収者は全株主の味方

昨今,M&Aがさかんになり,企業は買収防衛策の制定に躍起となっている.買収防衛策は,濫用的買収者から株主価値を守ることが目的であるが,実際は経営陣の保身のためとなっていることが多い.原則的に,すべての買収者は株主の味方なのであって,敵対するのは経営陣なのである. すべての個人が利益最大化を目的に行動することを仮定すれば,株主価値を損ねる買収は起こりえない.なぜなら,買収者も大株主であるからだ.買収者が株主価値を毀損するとすれば,それは買収者自身の利益を損ねることになる.これは仮定に反する. 買収者は全株主と利害を同じくしているのだから,株主の味方でこそあれ,敵にはなりえない.したがって,敵対的買収という言葉は,経営者からの一方的な見方に過ぎない.