ロスカットの効果

投資の世界では,利益最大化を狙う人よりも,損失を限定化する人が平均的に良い成績を上げると言われている.つまり,ロスカット(損切り)が上手い人のほうが儲かる確率が高くなるというのだ.このロスカットの効果をどのようにとらえられるか,株式を例にとって考察してみた.

ロスカットルールを導入することは,プットオプション付きの株式に投資することと,ほぼ同等とみなせる.プットオプションの行使価格はロスカットライン,行使期間は投資期間である.通常のオプションと異なるのは,株価がロスカットラインを少しでも下回ったら,その時点でオプションが行使される点である.

実際はオプションが付与されるわけではないので,対象株式の流動性が十分高くないと,この近似は成立しない.つまり,売りたいときに売ることができ,かつ,値動きが連続的でなければならないのだが,これはさほど厳しい条件ではない.オプション計算でも,設定される仮定である.

この近似が成り立つと仮定すると,ロスカットの(現在)価値は,行使価格がロスカットラインのプットオプションの現在価値に等しいことが導かれる.これには,ブラック・ショールズのオプション計算式を応用する.すると,ロスカット無しの期待リターンは「ゼロ」なのに対して,ロスカット有り場合,プットオプションの価値だけリターンが見込める.

ポイント
・ロスカットは投資の期待リターンを押し上げる.
・ロスカットを伴う投資の現在価値は,プットオプションの価値に等しい.

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