なぜ日本では電子書籍の普及が進まないのか

Kindleが発売されてから,2年くらいは経つのだろうか.私もKindleを持っているが,日本からも米国の書籍が,いつでもどこでも,瞬時に買えるようになって,非常に便利である.しかし,日本では電子書籍の普及が進まない.そして,それは当分の間,進まないのではないかと思われる.

確かに,日本でも電子書籍は増えつつあるのだが,Kindleのレベルには程遠い.その理由として思いつくところをあげてみると以下のようなところか.
  1. そもそも儲かる商売ではない.市場が小さい.
  2. 紙媒体市場での既得権益者が妨害している.
  3. 法規制がある.

これらの要因が複合的に働いていることが,電子書籍普及の妨げになっているのではないかと,私は考えている.まず,市場そのもののサイズが,英語の書籍と比較すれば小さい.オタク系の市場は比較的世界に広がっているとはいえ,独自の流通ルートが出来上がっているので,いまさら電子書籍が入る余地は小さい.そして,一人当たり書籍の購入数も減っており,人口も減少している.そもそも書籍が有望な市場とは言い難いのが現実ではないだろうか.既得権益業界からの圧力も当然あるだろう.著作権法や,書籍販売にまつわる法規制の影響もあるだろう.

このような要因で,多くのプレーヤーが,「日本の電子書籍ビジネスがさほど魅力的なものではない」と考えている結果,日本の現状があるのではないかと考えられる.

ただし,電子書籍普及の動きが無いわけではない.今年に入ってから,電子書籍の規格策定のために大手の出版,印刷,家電メーカー,通信会社が協力関係を構築した.日本でも電子書籍の機運が高まってきている証拠である.きっと,しっかりとした規格をまとめ,高品質の電子書籍リーダーを生み出してくれることだろう.

しかし,である.本当に儲かる話なのであれば,大手が集まって話し合いを持つ状況にはならないはずなのだ.米国では,アマゾンやバーンズ&ノーブルといった書籍流通大手が大きなプレーヤーとなっているし,アップルもiBooksで,電子書籍流通に参戦している.なぜこんなに各社がしのぎを削るのかというと,単純に儲かるからだ.

これに対して日本の状況はどうだろうか.既存の業界大手が寄り合いを開いて,「どうやって今の棲み分けを守りつつ,電子書籍を普及させ,安定した収益源に育てていくか」という話をしているようにしか見えない.日本における電子書籍普及はまだまだ先なのではないか.

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