土地・住宅価格は長期的には下落傾向

数日前の日経新聞に,東京近辺の中古マンション価格が上昇しているという記事があった.価格が下落し,値ごろ感がでたのと,景気が底は抜け出たようなので,思い切って購入しようという層が多いと見られる.「価格が上がり始めたから急いで買わないと!」という人もいるかもしれない.しかし,そんなに急いで買う必要があるのだろうかというと,そんなことは無い.やはり長期のトレンドは下落方向にあるからだ.根拠は,日本の人口が減少を始めていることにあり,この先減少が続くと予想されるからだ.

総務省統計局発表の推計によると,日本の人口は既に減少を始めており,2050年までには1億人を割ると予測されている.つまり,日本は今後次々に土地あまりの状況が発生することになり,平均的な地価下落と住宅価格の低下が,少なくとも実質価格の意味で,発生するものと思われる.

都道府県別に見ると,関東地方はまだ増加傾向にあるが,それも,そう長くは続かないようだ.国立社会保障・人口問題研究所,「日本の都道府県別将来推計人口」によれば,関東地方の人口は2015年から減少が始まり,もっとも遅くまで増加を続ける東京都でも,2023年には減少に転じると予測している.関東地方でも土地価格は上昇する勢いは弱いと言える.

総じて見れば,日本の土地価格は平均的には下落する可能性が高く,東京もその例外ではない.10年後には土地デフレが発生していることだろう.ただし,今のデフレの時代にあっても,高くても売れるものがある.例えば,高級携帯電話や,化粧品,健康食品などなど..価格の比較が難しく,消費者の心をつかむものは高くても売れるのだ.

同じことが土地や建物についても言えるのではないだろうか.美しい自然や温泉があって,アウトドアスポーツを楽しむ場所が近くにあり,景観が整っている別荘地や高級住宅地などがあれば,日本国内のみならず,外国からの引き合いが強くなるだろう.そうすれば,そういうごく一部の局所的な地価の高騰という現象が顕著に見られるようになり,もっとミクロな視点での地域格差が広がるのではないかと考えられる.

このように,土地価格は長期的な目で見れば下落しつづける可能性が高い.そのため,今住宅を購入しようという人は,終の棲家にするか,あるいは,数年後の値上がりを見込んで売り抜ける投資目的か,そのどちらかでないと割に合わない結果となりそうだ.いずれにせよ,将来にわたって周辺環境が良いであろう物件をじっくり吟味して購入せねばならない.

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